写真を撮る仕事を、長く続けてきました。
結婚式を撮っていた頃、私は「Photo感写」という名前で出張撮影をしていました。
きれいな写真を撮ることはもちろん大切でしたが、それ以上にずっと惹かれていたのは、その人たちが過ごしている時間そのものです。
少し緊張している新郎新婦。
うれしそうに見つめるご両親。
久しぶりに集まって大笑いしている友人たち。
写真に写るのは、その瞬間の姿だけではありません。
その場にいた人たちの関係や、それまで一緒に過ごしてきた時間まで、写真の中には滲んでくる。
私はずっと、そういう写真が好きでした。
そして今、Studio門出で新しく「還写(かんしゃ)」という撮影を始めようとしています。
「還写」という名前
「還写」は、「感謝」と同じ読み方です。
育ててもらったこと。
一緒に過ごしてきたこと。
何気なく毎日そこにいてくれたこと。
そういうものへの「ありがとう」を、写真という形にして還す。
そんな意味を込めました。
そしてもうひとつ、この名前には、以前使っていた屋号「Photo感写」からつながっている、という私自身の意味もあります。
感写から、還写へ。
撮るものは変わっても、私が写真で残したいものは、あまり変わっていないのかもしれません。
写真に残したいのは、顔だけじゃない

シニアポートレートというと、きれいな背景の前に座って、きちんとした写真を撮る。
そんなイメージがあるかもしれません。
もちろん、そういう写真も残したいと思っています。
でも、それだけではありません。
「おじいちゃんって、いつもここで碁を打ってるよね」
「おばあちゃんの家に行くと、いつも台所に立ってるよね」
「この庭のバラ、本当にずっと手入れしてきたよね」
「お父さんといえば、この店に立ってる姿だよね」
家族には、その人を思い出すときに一緒に浮かんでくる景色があります。

本人にとっては、毎日のことで何とも思っていない場所かもしれません。
でも家族にとっては、その場所まで含めて「その人」だったりします。
だから還写では、ご自宅や仕事場、思い出のある場所へ伺って撮影することも大切にしたいと思っています。
顔だけではなく、
その人が好きだったもの。
ずっと続けてきたこと。
いつもの場所。
一緒に暮らしてきた人たち。
そういうものまで写真の中に残せたら、その写真を見たときに思い出せることも、きっと増えると思うからです。
写真を撮る前の時間も、残したい

還写では、撮影前に少し「作戦会議」をします。
ご家族からのお申し込みなら、
「お父さんらしい場所って、どこだろう?」
「お母さんって、何をしている姿が一番浮かぶ?」
「昔から大切にしているものって何だっけ?」
そんなことを聞かせてもらいます。
これは撮影場所を決めるためだけではありません。
家族みんなで、
「そういえば、いつもあそこに座ってるね」
「昔からずっとこれ好きだよね」
なんて話をすること自体が、すでにひとつの時間になると思っています。
写真を撮る前から、還写は始まっています。
本人からのお申し込みなら、
「どんな自分を残したいですか?」
「好きな場所はありますか?」
「ずっと大切にしてきたものはありますか?」
そんな話を聞きます。
自分が何を大切にしてきたのか、どんな場所が自分らしいのか。
写真をきっかけに少し振り返ってみるのも、悪くないと思います。
以前、あるおばあちゃんを撮影した日のこと
還写という名前をつけるずっと前に、あるおばあちゃんのご自宅へ撮影に伺ったことがあります。
その日の様子は、撮影を依頼してくださった方がYouTubeで細かく記録してくれていました。
実はそのおばあちゃん、最初はかなり緊張されていたそうです。
知らないカメラマンが家に来る。
それだけでも不安ですよね。
でも、家に上がって、おしゃべりをして。
撮影機材について話したり。
少しおめかしをしたり。
昔のアルバムを見せてもらったり。
大切にしている鈴や、お花や、畑の話を聞いたり。
亡くなったご主人のお話もしてくださいました。
撮影が進むにつれて、最初の緊張はどんどん消えていきました。


途中からは、撮影そのものを楽しんでくださっているのがよく分かりました。
そして撮影の最後に、おばあちゃんが言ってくださった言葉があります。
「命のある限り、この思い出は忘れません」
「今日の日を命のある限り忘れません。思い出を作ってくれて、本当にありがとうございました」
そんな言葉をいただきました。
あの日のことは、私自身もよく覚えています。
残ったのは、写真だけじゃなかった

あの撮影で改めて感じたのは、
写真撮影で残るのは、写真だけじゃないんだな、ということでした。
知らないカメラマンが家に来て。
ちょっとおめかしをして。
昔の話をして。
家族と笑って。
写真を撮る。
それ自体が、ひとつの出来事になる。
もちろん、毎回そんな大げさな一日になる必要はありません。
30分の撮影でもいい。
スタジオで一枚だけでもいい。
でも、その日をきっかけに家族が話をしたり、久しぶりに夫婦で並んだり、自分のことを少し振り返ったり。
そんな時間が生まれたらいいなと思っています。
「遺影のため」だけじゃなくていい
シニアの方の写真というと、どうしても「終活」や「遺影」という言葉が出てきます。
もちろん、それも大切です。
元気なうちに、自分が気に入っている写真を一枚残しておく。
それは、いつか家族が写真を選ばなければならなくなったときにも、きっと助けになると思います。
でも、還写は遺影のためだけに撮る写真ではありません。
まずは今、自分や家族が見てうれしい写真であってほしい。
今の自分を、今の自分として残す。
その写真が何年も、何十年も残って、
結果として、ずっと先に家族のそばに置かれる一枚になる。
それくらいでいいと思っています。
撮る理由は、何でもいい
還暦だから。
古希だから。
米寿だから。
家族からプレゼントされたから。
夫婦で写真を残したくなったから。
終活を考えて、ちゃんとした写真を一枚持っておきたくなったから。
あるいは、特に理由はないけれど、
「今の自分を写真に残しておこうかな」
と思ったから。
それで十分です。
写真に残したいのは、顔だけじゃありません。
いつもの場所。
好きなもの。
長く続けてきたこと。
一緒に過ごしてきた人。
そして、その人らしい時間。
家族がその人を思い出すときの景色まで残したい。

そんな気持ちから、Studio門出の「還写」を始めます。
最後までお読みいただきありがとうございました!
「うちの子、人見知りだけど大丈夫かな?」
「衣装の持ち込みはできる?」
など、 少しでも気になることがあれば、いつでもお気軽にLINEでご相談くださいね。
私たち夫婦も、お会いできるのを楽しみにしています!

